2008年08月20日

福島地検なる国家機関が医療崩壊を促進!

 福島県立大野病院での帝王切開手術を受けた方が亡くなった件について、今日、無罪判決が出ました(関連報道記事は多数)。 

 この件について、様々な情報を集めて見ると・・・。まず、無罪判決は当然な上、福島地検という国家機関が素人判断で刑事訴追を行い、全国の医療関係者の意欲を削ぎ、医療崩壊を促進していることに怒りを感じました。この裁判は死亡した方の遺族が「民事事件」として訴えたのではなく、福島地検が「刑事事件」として訴えたことは、本当に驚きを感じると同時に理解に苦しみます。

 以下、この問題について分かり易く解説している こちらの産科医のサイトから引用します。この医師の問題意識、その通りだと思います。平成18年に加藤医師が逮捕された際の記事です。

癒着胎盤での帝王切開は未経験…逮捕の産婦人科医

 福島県大熊町の県立大野病院の産婦人科医師○○○○容疑者(38)が業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反容疑で逮捕された事件で、○○容疑者が数多くの出産に立ち会っていたものの、今回死亡した被害者のように、子宮と胎盤が癒着している状態での帝王切開手術の経験はなかったことがわかった。

 県病院局によると、○○容疑者は、医師免許を取得して9年目の中堅医師で、2004年4月に同病院に赴任後、唯一の産婦人科医として年間200回の出産に立ち会っていた。

 しかし、「癒着胎盤」の状態で帝王切開が行われたのは03、04年度、産婦人科がある4つの県立病院で今回のケースが唯一で、○○容疑者も経験がなかったという。

 県は昨年1月、専門医らで作る調査委員会を設置。同3月に、事故の要因を「癒着した胎盤の無理なはく離」「対応する医師の不足」「輸血対応の遅れ」などと結論づけ、遺族に謝罪していた。県は遺族と補償問題について交渉中という。

 会見した秋山時夫・県病院局長は、警察へ届け出なかったことについて、「当時、医療過誤という判断はなかった」と釈明した。

(読売新聞) - 2月19日0時30分更新

************私の感想

 癒着胎盤は非常にまれで、事前の予測は不可能なことがほとんどです。正常の妊娠経過で正常の経膣分娩後であっても、児の娩出後に胎盤が剥がれず大量出血が始まれば、そこで初めて癒着胎盤を疑い、緊急で子宮摘出手術を実施しなければなりません。その際には、大量の輸血も必要ですし、手術中に大量の出血により母体死亡となる可能性も当然あり得ます。

 どの癒着胎盤の症例でも、児が娩出する前には癒着胎盤を疑うことすら不可能の場合が多いです。今回報道されている事例は、帝王切開ですから、当然、手術前には癒着胎盤の診断がついてなかったと思われます。手術中に、児を娩出した後、胎盤がどうしても剥離しないで大量の出血が始まり、初めて癒着胎盤とわかったと考えられます。大量の輸血の準備をして帝王切開に臨むことは通常ありえません。また、帝王切開は腰椎麻酔で実施されることが多いですが、大量の輸血の準備もなく、腰椎麻酔のままでは、帝王切開から子宮摘出手術に移行すること自体が非常に危険です。麻酔科医がその場にいなければ、手術中に腰椎麻酔から全身麻酔に移行することも不可能です。

 ですから、今回の事例では、誰が執刀していても、母体死亡となっていた可能性が非常に高かったと思われます。帝王切開をしてみたら、たまたま癒着胎盤であったケースで、母体を救命できる可能性があるのは、いつでも大量の輸血が可能で、複数の産婦人科専門医が常勤し、麻酔科医も常駐している病院だけだと思います。そういう人員・設備が整った病院であっても、帝王切開中に突然大量の出血が始まれば、全例で母体を救命できるという保障は全くありません。

 今回の事例は、術前診断が非常に困難かつ非常にまれな癒着胎盤という疾患で、誰が執刀しても同じく母体死亡となった可能性が高かったのに、結果として母体死亡となった責任により執刀医が逮捕されたということであれば、今後、同じような条件の病院では、帝王切開を執刀すること自体が一切禁止されたと考えざるを得ません。

 産科診療に従事していれば、母体や胎児の生命に関わる症例に遭遇することは日常茶飯事です。我々は、この生命の危機に直面した母児の命を助けるために帝王切開などの危険な緊急手術を日常的に実施していますが、手術の結果が常に患者側の期待通りにいくとは全く考えていません。産科では、予測不能の母体死亡、胎児死亡、死産は、一定頻度でいつでも誰にでも起こり得るという事実を全く無視して、結果責任だけで担当医師が逮捕される世の中になってしまえば、今後は危なくて誰も産科診療には従事できません。今後の産科診療に非常に大きな影響を与える重大事件だと思います。
(以上、引用終わり)
 
 加藤医師が無罪になったことは当然ですが、懸命に仕事をしたにも関わらず犯罪者扱いとされ、仕事を信用を失い、他にも多くのものを失ったことでしょう・・・。このような「刑事訴追」の横行を許してはならないと、一国民として強く申し上げたいと思います。

 例えて言えば、人質を取られて立てこもっていた犯人のいる建物に警察が最終的に突入して、人質が殺されてしまった。その警官に対して、「おまえのせいで人質が死んだ」と検察が警察官を刑事訴追するようなもの。
 人質が死んだ原因となった「不手際」は、事後的になんとでも言えますよ・・・。現場検証を詳細にした結果、「犯人の右側から近づけば、犯人に気付かれなかったかもしれないのに、左側から行った。だから人質は死んだんだ!」と。事後的にそう言えても、その場でそうしなかったから刑事訴追しますか?こういうケースで。

 そもそも、出産も医療行為も「リスクが有る」という前提を社会が忘れているか、敢えて見ないようにしているように思えて仕方が有りません。


small_ribon.gif医療崩壊を国家機関である福島地検が率先して行うことは許されざること、という方はこちらの2つのボタンを押してください。
にほんブログ村 政治ブログ 政治家(議員)へninkiblogbanner.gif

posted by 小坂英二 at 00:00| Comment(7) | TrackBack(0) | 区政全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする