2010年12月03日

介護の現場を踏まえ意見交換

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 今朝、娘を保育園に送る前に区立尾久宮前小学校の体育館全体を貸し切りにして昨日から明日までの三日間開催している「ミヤマエ・ミュージアム」を拝見してきました。

 全学年の児童が沢山の芸術家の方に教えていただきながら、その人柄に触れたり、新しい素材や表現方法に出会いながら作品を作り、展示したものです。地域に開かれた展覧会ですので、気軽に足を運んでみて下さい。

 さて、昨日の夕方に特養ホーム花の木ハイム地下ホールで行われた荒川区介護サービス事業者連絡協議会(HPはこちら)主催の「区議と事業者の交流会」に参加。前回、同様の機会が有りましたが出られなかったのですが今日は都合がつきました。

 98法人209事業所が参加している協議会で、同業他社の横の連携を図っています。年月日の記事で報告した「介護フェア」を開催したり、福祉関連の様々な催しに参加を組織としてされています。

 主な問題提起として以下の3つの論点を中心に話をされました。小坂からは「介護の現場に小中学生がもっと触れる機会を増やし、その大変さや素晴らしさを知るきっかけを増やす取り組みを行政に求めていきたい」ということや「限られた財源の中でボランティアの果たす役割」などの話をさせていただきました。

 限られた時間だったので、もっと話をしたかったので、会が終了後もしばらく立ち話で、様々な課題について意見交換をさせていただきました。

 様々な事業者の方からお聞きした話の要点を記しました。読者の皆様にも現状の課題を知っていただく一助になるかと思います。また、こうした現状を踏まえて議会で問題提起を続けて参ります。

(1)人材確保と介護職の社会的地位

・ただ、人を増やせば良いというものでは無い。3Kイメージが先行しており、求職者にとって敷居が高いと見受けられる。女性は男性よりも転職しての介護職に適応がスムーズ。

・介護保険サービスは時間が不定期であり、事業者にとって非常勤での勤務体制が運営しやすい。

・人材の育成期間に収入が得られないので、その期間を確保するのが難しい。

・資格と技量が高い方を採用しても、法的運用基準が決まっているので、小規模事業者ではその能力を活かしきれない現実が有る。

・人材不足、短期離職の状況がひどい状況。志をもって介護職に就いても家族を養えない状況で辞めていく例が現実に沢山有る。

・介護職の方の志に支えられて、なんとか成り立っている状況。

・ヘルパーの時給単価は1300円から2000円。しかし、これは「実働部分」についてのみ。実際の時間が短い(1度に30分、1時間程度など)。移動時間などは対象外で給料設定されている。平均的な事例で計算すると1つの現場で一回、3000円。月に30万円(様々なものを差し引くと手取りが18〜20万円となる)というのが実態。現状の報酬単価では、経営を成り立たせるにはこれが精一杯。

・現場でヘルパーが介護利用者からきつくあたられて泣いて帰ってくる例も有る。そうした面で厳しいところが有る。

・最近、初回加算という制度ができ、2000円余りが支給されるようになった。ただ、これは利用者負担も増える制度となっているのが問題。

・行政が考えるヘルパーの質と、現場が求めるヘルパーの質に乖離が有る。無職の方に、ヘルパー2級を行政の後押しで取得をさせても、現場を知らずに新たに入って来た方は離職率が高い。行政もそのあたりをしっかりと認識して欲しい。

・新たに職安を通して求職者を雇い、ヘルパー資格を取らせて補助金を受け取れる制度を区で設置をしているが、1年間という時期が限られた制度であった。これは使い勝手が良かった。ただ、雇い入れてから区に相談しても助成は出ない仕組みであった。

・「人の命を預かる」介護の特殊性を理解しないで、新たに人材を入れても続かないのが現状。

・勤務3年以内の方の離職率が高い。慣れない仕事でヘルニアを発病したり、といった例も有り、技術的・精神的に慣れるまでにかかる時間がかなり必要なのが介護職

・介護福祉士(国家資格)を取得することを推奨しているが、取得してもヘルパー単独で仕事ができる訳ではないし、給料もほとんど上げられない。

(2)施設満床の問題

・高齢者用のグループホームが区内には106人分有る。介護保険制度の中の位置づけとは違う形の現状となっており「プチ・特養ホーム」になっている。特養ホームに入れないので、その順番待ちの間に入る方が多い。また、家族には「預けて安心しきってしまう」事例も多い。

・ショートステイについては、区内に9つの受け皿が有り87床。介護保険利用者が8000人程度いる中、現状は予約を取るのは厳しい。一つの部屋に二人の利用者が重なる時間帯がどうしても出てしまう。

・ショートステイの新規受け入れが難しいのは、リピーターが多い現状も有る。月に1人、2人しか新規を受け入れられない。リピーターがいるのと、新規の方のリスク(疾患や性格など、また事前の家族の説明と違う)も有る為。

・送迎については、毎日ルートが異なるので、人件費が重複してかかる。

・世田谷区の「やさしい手」というショートステイを大規模に実施している事業者が有るが、送迎はしていない。行き来は介護タクシーを使っている。

・ショートステイの現状は半月から一カ月になっている現状も有る。施設によっては利用期間を自主規制している。

・有料老人ホームにショートステイを併設するような事業者を誘致していく必要が有るのでは。

・小規模多機能型施設は料金が一律なので、重い負担になる事例も多い。制度設計が厳しすぎた。形としては理想的だが、経営が成り立ちにくい。

・荒川区にはデイサービスが多くある。デイサービスで近所の方と顔をあわせたくないという方、家で1人でいたいという方もかなりいる。40ケ所有るが、全て空きは有る。施設によって内容は様々。

(3)平成21年度介護保険制度改正後の変化

・国は身体的なサービスに重きをおいて、生活援助(1.5時間がマックスに設定)を軽くしている。重きをおかれて増やされた分は待遇改善に回した。

・待遇改善を賃金のみで行おうとすると事業者の負担が増えることになる。パイの大きさは基本的に同じなので、それをどう配分するかという点が難しい。

・長期的に経営を考えた際に、賃上げなど難しい。介護保険法も改正をされると思われるので、先が見えない。10年後に、もっとやりがいのある職にしていきたい。

・定期的に介護職の方を表彰するような取り組みも大変励みになりありがたい。

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スカウター : 荒川区議会議員小坂英二の考察・雑感
posted by 小坂英二 at 12:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 区政全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする