「再発防止活動を緊急展開」 構造計算書偽造問題で建築学会
構造計算書偽造問題を受けて、日本建築学会(村上周三会長)は2日、記者会見を開いた。村上会長は「この問題を建築分野全体の社会的信用を失墜させかねない深刻な事件と受け止め、学術団体として再発防止のための活動を緊急に進める」との声明を発表。会長直属の特別調査委員会を設け、分野横断的な調査研究を展開していく方針を示した。
村上会長は声明の中で、「この事件の背景には、倫理的課題だけでなく、建築産業の変容など経済的側面、建築確認制度、建築士制度などの法制度や建築生産全般にかかわる数多くの問題が存在することを見逃してはならない」と指摘。「事件を偶発的なものとして受け止めるのではなく、建築生産全般にかかわる構造的問題として位置付けるべき」と訴えた。
会見には、前会長で東京工業大学名誉教授の仙田満氏をはじめとする多くの役員らが出席。同学会で建築設計者資格の在り方などを検討している仙田氏は、「建築産業を取り巻く概念が、量から質へと大きく転換する中、現行の建築士法も設計者の質をより重視した制度への改革が欠かせない」と強調。建築士資格に▽専門性の明示▽更新制の導入▽継続能力開発の活用―といった項目を盛り込むよう提案した。
建築関連法令の在り方を検討している東京大学の神田順教授は、「建築基準法、建築士法がともに社会に適合しなくなっている。建築関連の法体系を全面的に見直し、建築にかかわる設計者、構造技術者はもちろん、行政や国民の責務を示す基本的な枠組みを構築することが必要だ」と述べた。
前副会長で東京工業大学の和田章教授は、「コンピュータの普及によって、素人も構造設計に乗り出すようになり、それを実務経験に乏しい検査員が検査している現状には疑問がある。構造設計の専門家が設計をチェックする体制の整備が重要」との考えを示した。
=再発防止へ特別調査委を新設=
日本建築学会(村上周三会長)は、(仮称)「建築不祥事の再発防止策検討特別調査委員会」を新設する。情報化時代での建築設計のチェックシステム・レビューシステムの在り方や、建築設計者資格を含む望ましい制度の在り方などを検討。12月15日の理事会で設置承認を受け、1年以内に提言をまとめる方針だ。
同学会は、今回の問題の背景には建築生産システム全体にかかわるさまざなま問題が潜んでいるとみている。特別調査委員会では、中立的な立場でこうした問題を調査し、不祥事の再発防止に向けた対策を検討していく。委員長は村上会長が務める。
検討項目は、@情報化時代における建築設計のチェックシステム、レビューシステムA建築設計者資格を含む建築設計の望ましい制度B日本の住宅建設産業の方向性C建築教育における倫理教育D建築関係保険制度の確立―の5項目を想定している。
(引用終り)
記事の中の「コンピュータの普及によって、素人も構造設計に乗り出すようになり、それを実務経験に乏しい検査員が検査している現状には疑問がある。構造設計の専門家が設計をチェックする体制の整備が重要」という指摘は全くその通りで、区としても建築確認の実効性確保のために変えるべき点を早急に把握して対応しなければならないと考えています。業界から実務経験に基づいた改善策が提案され、そうした提案を受けて偽造の再発防止に繋がる抜本的な対策がとられなければなりません。
日本建築学会による耐震強度偽装問題についてのシンポジウム「問題の背景とその所在」が12月26日13:30〜16:30に建築会館ホールで開かれるとのこと、小坂も時間が合えば参加する予定です。
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