2009年05月22日

雑誌に小坂の執筆記事掲載!

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 2月26日のブログ記事(予算特別委員会での小坂の質疑)に書いた「選挙管理委員の実態と乖離した報酬」について説明した、「地方自治職員研修」という専門誌(月刊雑誌)の最新号(6月号)(5月18日発売)に小坂の書いた記事が2ページ掲載されましたので、その全文を下記にご報告致します。上記リンク先のブログ記事もまずお読みいただければ幸いです。出版元より掲載誌を5冊小坂の手元に送っていただきました。

 この雑誌は地方自治体の職員や議員が主に購読者となっている雑誌で、2月の小坂の質問内容を見て、執筆依頼をいただいたものです。こうした事項について、問題意識を持つ方が増えているのを実感します。今後、さらに問題提起を広げて参ります。

(以下、小坂の書いた記事)
「選挙管理委員の論点〜報酬を中心に」

★大津地裁判決のインパクト★

 平成21年1月22日大津地裁判決において滋賀県の行政委員(選挙管理委員・労働委員・収用委員)の報酬について、「勤務実態を見れば高額の月額報酬支払いは地方自治法違反である為、月額での支出は止め、勤務日数に応じて払う日額報酬とする」ように命じる判決が出された。

 石原稚也裁判長は、地方自治法の規定で、非常勤職員の報酬は原則勤務日数で支給し、常勤職員と勤務実態が異ならない場合のみ、例外として条例を定めて月額報酬の支給が可能と指摘。
 滋賀県の各行政委員の勤務実態は月1回から数回。「常勤職員と異ならないとは到底いえない」とし、非常勤の各行政委員に月額報酬を認めた県条例は無効とした。

 滋賀県は控訴したが、地裁判決でこうした現状が地方自治法違反であるとの判断が下されたことは大きな意味を持つと考える。

★勤務実態と報酬の乖離★

 大津地裁で月額報酬は地方自治法違反との判決が出された行政委員のうち選管委員について着目してみる。
 選挙管理委員会は、執行機関として地方公共団体に置かれる委員会で、4人の選挙管理委員をもって組織されることが地方自治法で定められている。
 滋賀県の選管委員の報酬は委員長が月額226,000円、委員が月額202,000円と定められている。こうした月額報酬は全国の多くの自治体でも同様で、二十三区もほぼ横並の状況である。

 選挙管理委員の毎月の高額な報酬を「勤務日のみの報酬に荒川区から是正する流れを作るべき」と2月25日の区議会予算特別委員会総括質疑で質問をした内容に触れながら現状を示したい。

 荒川区においては選挙管理委員は十分から数時間の限られた会議や啓発活動などに出席するだけで、委員長は月額286,000円、委員は月額240,000円もの報酬に加え、別途一日3,000円の日当(費用弁償)も得ている。

 選挙前は会議が多いものの、少ない時は月に1回の時期すら有る。4人のうちいずれかが参加した会議などでの勤務実績は平成20年に日数で75日、出席した時間を合計してみるとわずか144時間のみ、平成19年には93日、合計時間数192時間と少なく、選挙管理という限られた範囲の業務が対象であり兼業で努めることを前提にした報酬であるべきと考える。

★既得権化した選管★
 このような高額報酬が維持されてる背景として次の実態は大きな意味を持つ。東京都の特別区23区を見ると各区4名で合計92名の選挙管理委員のうち60名が引退した元区議会議員である。荒川区でも現在4名中3名が区議OBで以前は4名全員が議員OBであった。

 つまり議員の実質的な天下り先となっていると言え、議会、特にOBを送り込んでいる大会派では自分がOBとなり将来就く可能性の有るポストの報酬引き下げや在り方の是正に進んで取り組まずに来たのが現状である。こうした慣れ合いが、議員や選管委員、さらには行政への不信感を生む原因の一つとなっていることを、議員や行政はしっかりと認識しなければならず、心ある議員は声を挙げていくべきであると思う。

 荒川区と人口規模も近い石巻市などは選管の報酬は日額とされ委員長に15,000円、委員に11,000円支給されているが、それが適正ではないか。石巻市と荒川区の選管委員の仕事に大きな違いは無い筈である。
 滋賀県を提訴した吉原稔弁護士の試算では選管委員報酬を全国の自治体で是正すれば実に100億円の財源を生み出せるとのこと。選管委員はもちろん行政委員全般の全国の自治体での報酬是正は国民に分かりやすい行政改革とも言え、行政や議会の綱紀粛正の姿勢を示し財源も生み出せ大きな意味を持つ。
 そもそも中央選管は日額での報酬支給とされているのに、地方の選管委員の多くが月額となのか、その合理的な説明は現在、なされていない。

 荒川区として大津地裁で示された妥当な判決を重く受け止め、月額報酬を勤務日のみの報酬に二十三区で先駆けて改め、こうした二十三区共通の悪習に風穴を開け報酬の適正化を他の特別区、ひいては全国の自治体にも波及させてはどうかと問題提起をしたが区は「選管委員の責任は重要。報酬は特別職報酬審議会の答申内容を参考に専門性や職責、他区とのバランス等も考慮の上算定し、議会の承認を得ているし委員の選出も適正に行われている」と答えるのみで是正の意思は無い。
 しかし、同志と共に世論を喚起しながら声を挙げ続けていかなければならないと考える。

★選管の出自と改革能力★ また、現在は選管委員の選出方法は立候補も推薦も無い状態にも関わらず本会議で議員が名前を書いて決まるという不可解な制度で行っている。
 既に事前の打ち合わせで筋書きができている訳である。
 この結果、狭い範囲の人材ばかりを就任させることとなり、選出方法について多様な人材が客観的な能力や経歴を事前に提示して選ぶような仕組みを構築すべきと考える。 

 議員OBではなく、例えば弁護士、税理士、行政書士、司法書士などの資格、見識、行政知識も豊富な方で意欲の有る方が選管委員に適任ではないか。
 議員OB選出の選管委員では基本的に前例踏襲となり新たな取り組みも期待しにくい。例えば、区議会議員選挙で配布できる文書は選挙葉書と選挙公報のみと定められている為、せめて「若者が情報を得やすいように選挙公報の内容を選管のHPに掲載して選挙期間中も閲覧できるようにしてはどうか?他に行っている自治体も無い中、実施すればニュースにもなり、関心も高まるのではないか?
 また、選挙公報をカラーにしてはどうか?」(法的には可能)と以前委員会にて質問をしたが、「実施はしない」との答弁しか返ってこなかった。

 選挙時における街頭宣伝車のガソリン代の公費負担額の上限金額は、10キロ平米の小さな自治体である荒川区において現実的に有り得ない高い基準(1台で1日7,350円)で規定・支出されており、満額近い金額を受け取った議員も出て区議選終了後、少なからぬ議員・候補が不適切な公費負担分を返還した。
 そうした状況となっても、選管委員から上限金額見直しをする方向が打ち出されることは無かった。これが荒川区における今迄の選管委員の現状である。
 民間の柔軟な発想を持つ人材が選管委員であれば、創意工夫や不適切な規定の見直しが進むと期待される。
 荒川区が選管委員報酬見直しをする意向を持たない為、有志議員と議員提出議案を提出し報酬の是正をできるように働きかけていく予定である。

★足下から改革の波を★ 大津地裁判決を受けて行政側から適正化を行う自治体も出てきている。
 神奈川県は2月に選管委員を含む9委員会の非常勤委員73人全ての報酬を月額から日額に是正する方針を打ち出した。新聞取材に対し神奈川県の松沢成文知事は「地方自治法を確かめてみたが、どう読んでも原則日額支給でいきなさいという書き方だ。
 財政状況の厳しさが増すことが確実視される中、慣例化してきた部分も聖域化せず、法の趣旨通り見直したい」と話した旨の報道がなされている。実に同感である。
 山口県も月額報酬を見直す方針を固めている。世田谷区では議員有志で議員提出議案として報酬の日額化(中央選管委員と同額で委員長29,700円、委員27,200円)への是正をする動きがあったが、残念ながら賛成少数で否決をされた。4月7日には市民オンブズマン高知のメンバーが高知県に対し選管委員を含む非常勤の行政委員の月額報酬の支出差し止めを求める住民訴訟が起こされた。

 選管委員のみならず全ての行政委員の役割と報酬、人数、必要性も国レベルで根本から問い直す必要性を痛切に感じる。行政委員の在り方を見直す波を全国に広げていきたい。

 今まで議論の俎上に上がって来なかった事項を、政党や大会派に所属しない議員から問題提起をして、世論を喚起し大会派も巻き込み是正をしていく使命を自任しながら活動を続けるたい。
 読者の皆様にも行政の在るべき姿と乖離が有れば心ある議員と連携をして声を挙げていただきたいとお願い申しあげる次第である。

(記事は以上です)

small_ribon.gif選管委員の報酬は荒川区を初め全ての自治体で見直しをすべき、という方はこちらの2つのボタンを押してください。
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スカウター : 荒川区議会議員小坂英二の考察・雑感
posted by 小坂英二 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 区政全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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