2010年11月27日

知的障害者が活き活きと働く葡萄畑

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 昨日の「創新の会」の首長・地方議員で参加をした足利市の「こころみ学園」と「ココ・ファーム・ワイナリー」視察の御報告です。

 まずは、食堂にて説明を受け、質疑応答。
こころみ学園(こちらの記事もどうぞ!)とワイナリーについては公式HPから以下、転載しましたので、お読みいただければ幸いです。

(以下、転載)
 1950年代に、特殊学級の中学生たちによって開墾された葡萄畑が、私たちのワインづくりの原点です。この足利市田島町の急斜面の山で、当時、知恵遅れと呼ばれていた少年たちは、汗まみれになりながら夏草を刈り、寒風の吹きすさぶなかでお礼肥えの穴を掘ってきました。

 平均斜度38度のこの葡萄畑は、陽当たりや水はけがよく、葡萄にとっては最良の条件です。しかし、耕運機やトラクターが使えず、人間の足で登り降りするしかありません。剪定後の枝拾いや、堆肥を運びあげる仕事、一房一房の摘房作業、そしてかごをかかえての収穫・・・全ての作業が、自然のなかでの労働を通して、自らの力をつけ、その力をもとに自然の恵みを引き出していくことでもありました。そんな毎日の暮らしのなかで知恵遅れと呼ばれ続けてきた少年たちは、知らず知らずのうちに寡黙な農夫に、陽に灼けた葡萄畑の守護人に、醸造場の働き手になっていきました。

 1980年代のはじめに、知的なハンディを持つ人たちの自立を目指してつくられたこころみ学園のワイン醸造場も、1980年代の終わりにこころみ学園の園生たちが葡萄を植えたカリフォルニア・ソノマの葡萄畑も、まさに自然のなかでの労働と暮らしから、自然の恵みであるワインを享受していくことでした。

 現在、この葡萄畑から一望できるこころみ学園には90名の利用者がいます。そのうち85歳を筆頭に50歳をこえた人は56名。つまり、ここに働き暮らす人たちのうち、約2分の1が高齢の知的障害者です。草刈りに大がまを振るっていたA君も山のような洗濯物を干してきた I さんもだいぶ歳をとりました。彼らは今、ゆっくりとではありますが若い農夫と一緒に、あらたな葡萄畑の開墾に明日の夢をつないでいます。

 私たちは、伝統や名声を誇る外国のシャトーのように、潤沢な資金を持つことができません。大手のワインメーカーのように、大量生産することもできません。

 しかし、葡萄を育てワインを醸す仕事に、名もない(自分の名前さえ書けない)人たちが中心になって取り組んできたことを・・・どんなに辛くても、一年中空の下でがんばってきた農夫たちがいることを、ひそかな誇りに思っています。ここにご紹介するワインは、葡萄づくりに、ワインづくりにがんばってきた知的障害の仲間たちが、のんびりと葡萄畑で自分にあった仕事−草取りや、石拾いや、カラス追い−をしながら、自然に囲まれて、安心して年をとっていけますよう、そんな願いが込められています。
(以上、転載終わり)
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 生活の場である食堂の写真。ここで責任者の方から当日お聞きした話からご報告。

・以前は更生施設であったが、今は支援施設。

・昭和44年に社会福祉法人になった時の建物は補助金なしで立てた。園長が最初に言ったのが「貧乏でも働きながら助け合って生きていく施設にする」ということで、その原点を今も引き継いでいる。

・当時、千葉県でも施設の立ち上げに施設長として呼ばれたことがあるが、そこは当時としては立派すぎるハコモノ。来た時は目の輝いていた子供達も、どんどん目の輝きを失って来るような状況であった。その千葉の施設は夕方の5時になると職員は帰宅する。夜はさみしい施設であった。だから、今ここでは家族のようにいっしょに暮らして頑張っていくことにこだわっている。

・補助金をもらったら、くれたところに遠慮しなければならなくなる。一度頼ると、困った時に補助金に逃げてしまうという意識で以前は施設運営を行っていた。

・独身の職員は住み込みで働いている。障害者と共に家族のように暮らしている。障害者ももちろん自分でできることは全て自分で行う。

・洗濯係(知的障害者)は百数十名の洗濯物を毎日間違わずに届ける。そうした才能が有る。

・食事は130〜150食を作っている。90人の定員に94人が入所中。別途で短期入所に10人。あとは通ってくる人もいる。

・入所者は中学校卒業以降の方。入所は18歳以降。障害者手帳を持った方の為の施設。

・施設の利用料(給付費=国が9割負担、個人が1割負担)が大きな収入源。補助金は一時的な施設改修などに使う。

・こころみ学園で作ったブドウを「(有)ココ・ファーム・ワイナリー」が買い取る形にしている。生のブドウだけを扱っていた当初と比べると、世間の相場よりも安定した収入が得られるようになっている。学園でシイタケも10トン作って販売している。それらの売り上げはほとんど経費で消えるが、余剰が出ると障害者に配る。一人当たり年間十万円。

・「働ける障害者は入所施設にいてはいけない」という趣旨の自立支援法が有るので、ワイナリーで「働く」という形にできず、「就労訓練」の為の派遣と位置付けている。そのため、直接、個人に支給するのではなく有限会社と社会福祉法人でのやりとりとなっている。

・有限会社は20人のスタッフに給料が払える位にギリギリの経営をしている。社長は入所者の親がやっている。

・会社は昭和55年に立ち上げた。生のブドウだけを扱っていたが、生のブドウだけでは不安定なのでワインを作り始めた。酒造りの免許は障害者施設にはあげられないと、当時は言われていた。そこで、入所者の親が何人か集まり有限会社を設立した。そうした経緯の会社なので、会社の利益はなるべく学園に入れるようにしている。

・ブドウ畑はもともと彼らの訓練の場として設置をした。ブドウは1年間様々な作業が必要で手間をかけることが不可欠だが、「努力」が「成果」に繋がるので良いと思った。あと、ワイン作りという「カッコイイ」仕事をプライドを持って知的障害者にしてもらえれば素敵だという考えも有った。

・ここは市街化調整区域なので、大規模施設は建てられない。しかし、社会福祉団体であればできるので、学園が建てて、それを有限会社に貸している。ワイナリーが倉庫を作りたいと思ってもすぐに作れない。

・自立支援法によって、デスクワーク(事務作業)が著しく増えたのが問題。こうしたものはなるべく簡略化し、本来、スタッフは現場で障害者と向き合って働いていくべきなのに・・

・こころみ学園の人件費比率は70%。これ以上、職員を雇うことはできない。

・障害者自立支援法の縛りにしたがって人員配置をすると、人の確保が困難である。職員のローテーション確保が極めて難しい。

・社会福祉法人施設に職員の寮を施設内に置くことが国等から「不適切」と批判されたりする。

・自立支援法では、昼の事業の部、夜の事業の部と分けられている。昼の事業は原則週休2日。特例は有る。シイタケ栽培など毎日、作業が必要なのに、週休二日を基本的に法で強制され、その休みの分は施設は利用料を得ることができないという矛盾が有る。また、特例で認められる加算をつけるためには、事務作業がとても増える制度になっている。

・障害者自立支援法ができてから、外に出て作業を始める前に全てチェックして日誌もつけることとなり、ものすごい量のデスクワークが増えた。


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 傾斜38度の斜面に位置する葡萄畑。一年中、手入れをしなければ良い葡萄はできません。先週末には収穫祭で大賑わいだったそうです。こちらの記事もどうぞ。

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 こころみ学園では年間10トンのシイタケも生産。ホダ木を知的障害者の方が斜面を何度も運び、新鮮なシイタケを生み出しています。売店で生シイタケを売っていたので、今朝、塩焼きにしていただきましたが、とても美味! 

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 傘の下に幕が張っている状態がシイタケの食べごろだとか。

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 作業中。 

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 休憩中。とても活き活きしています。土曜日は自らが作った葡萄でできたワインを自由に飲む日だそうです。

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 ワインの醸造所も見学させていただきました。「ココ・ファーム・ワイナリー」のワインは洞爺湖サミットや沖縄サミットでも使われる程、プロの評価が高いものです。

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 自閉症の方は、決められたことをきちっとやることに強いこだわりが有ります。ワインの瓶を決められた角度で回転させる作業を任せると分度器で計ったように正確に回転してくれるとか。
 また、ワインに使う葡萄を一粒一粒吟味して質の悪いものを除外する「選果」の作業も、最初から最後まで集中して続けられるのも強みだとか。

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 葡萄畑では除草剤は使わず、手作業での除草。農薬も極力使用しない。そんなこだわりが「障害者が作った葡萄だから」という理由でなく「真に素晴らしい葡萄でつくられた素晴らしいワインだから」という理由で多くのプロからも高い評価を得ています。

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 大変慌ただしい視察でしたが、葡萄畑を見渡せるカフェレストランなども有り、今度はゆっくりと家族で来たいものです。売店でワイン5本やカプチーノ仕立てのシイタケスープ15袋などを購入し自宅へ発送。

★「ココ・ファーム・ワイナリー」のワインはこちらのネットショップから購入できます。自宅用に、またお歳暮などにも如何ですか?

椎茸スープはこちらから

★小坂の近所である東尾久1丁目のイタリアンレストラン「エノテカ・エクウス」でも「ココ・ファーム・ワイナリー」のワインを使っています。住宅街の中のおしゃれなレストラン。

 障害の有る方が、その持ち味を活かして働ける場が荒川区においても広げていけるように、そしてその場が付加価値の高いものであれば素晴らしいと思いますので、そうした問題提起を今後も続けて参ります。

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スカウター : 荒川区議会議員小坂英二の考察・雑感
posted by 小坂英二 at 00:00| Comment(5) | TrackBack(0) | 区政全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
世間では障害者を弱者と見られる人が多いが決して弱くない 多くの方々の力を借り感謝しつつ懸命に生きている 小坂さんのレポートから窺い知れる 人権問題に取り組む人達に権利を主張する前に出来る義務を見つめ直せと大きな声で言いたい
Posted by 荒川躍進 at 2010年11月29日 10:29
>>荒川躍進 様
 ご指摘、頷きながら読ませていただきました。ココ・ファーム・ワイナリーの取り組みは正に「生き抜く力を育てる」もので、こうした観点は全国の障害者施設をはじめとする福祉施設で取り入れていくべきものと考えています。
Posted by 小坂英二 at 2010年11月30日 10:38
はじめまして。
数年前、拉致の国民大集会で、終了後の日比谷公会堂の正面玄関出て、階段を下りて行く際、挨拶された方が、どうも小坂英二さんらしい。
それで、『荒川区議会議員 小坂英二 掲示板』、「荒川区議会議員小坂英二の考察・雑感」と、私のブログに現在二つ載せて戴いています。
今回、時々拝見するその貴方のブログを見たら、昔々、私が某園職員時、研修旅行で訪問した、こころみ学園の訪問記を報告してありましたので、寄らせてもらいました。
創設者川田園長、ご健在で、なによりです。ここは、三十年前でも、全国有数の、前衛施設で、あれから、外国のワイン醸造技師を招聘して、今や地元のみならず、全国よりその収穫祭には人々が参集する、という有名施設ですね。
いつもながら、よく撮られた写真掲載で、とても分かりやすく親しみやすい。
また、荒川区という下町の、情緒あふるる、しかし、なにか国際的にも問題抱える自治体で、貴方の健闘するのを知るのは、爽やかで和みます。これからも、隣国での砲火、それに係わりある数ある法案の件、難問山積でしょうが、よろしく前進、お頼みします。
Posted by 海風 at 2010年11月30日 11:53
ココファームワイナリー、仕事の関係でお客さんに案内されてお伺いしたことがあります。ビックリするくらいの急斜面に苗木を植えるのを手伝われたそうで、かなり誇らしげにお話してくださいました。もう5年くらい前の話なのですが、一度ゆっくりお伺いしたい!と思わせるいい感じのところですよね。
Posted by tnt at 2010年11月30日 12:54
>>海風 様
 拉致問題の大集会でお会いしたのですね!ワイナリーにも研修で現場に行かれていたというのも奇遇ですね。
 都心からわずか1時間電車に乗り、タクシーに乗ればあのような素敵な場所が有ること、そこで素敵な農夫が頑張っているのは嬉しいことですね。
 ありがたい激励をいただき、感謝です。今後も、大局観を持ちながら地域、そして国の課題にしっかりと取り組んで参ります。どうぞ、宜しくお願い致します。


>>tnt 様
 5年前に訪れておられるのですね!本当に、ゆっくりとしていきたい場所でした。スキーのジャンプ台と同じ位の傾斜だと現場の責任者の方から聞きました。
Posted by 小坂英二 at 2010年11月30日 16:48
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