政府・与党に小・中教科書貸与論が浮上、文科省は反発
小中学校で教科書が児童・生徒に無償で配布されている制度を廃止し、貸与制や有償制などを導入する構想が政府・与党内で浮上してきた。
義務教育費を削減するため、財務省などが提案し、自民党内の一部にも理解を示す意見がある。ただ、文部科学省は「無償配布制廃止は教科書に書き込みができないなど、学習にも影響する」と強く反発しており、議論の先行きは見えていない。
教科書無償措置法では、国が教科書購入費を全額負担し、全小中学生に無償配布することを規定している。2006年度の教科書費用は約395億円。
4月27日に自民党本部で開かれた歳出改革に関するプロジェクトチーム(一般分野)の会合で、財務省は小中学校教科書について、「先進7か国で無償配布しているのは、日本とイタリアだけだ」などと指摘した。
そのうえで、教科書を授業中のみ生徒児童に貸し出す貸与制や、希望する保護者に教科書代を負担させる有償制などの導入を検討すべきだとの考えを示した。
出席議員からは「貸与を基本に検討して欲しい。希望があれば有償でもいいし、教科書を汚した場合は買い取りさせてもよいのではないか」との意見も出た。
これに対し、文部科学省は小中学校の教科書無償配布は、憲法26条で定める「義務教育の無償」に基づくものだとしたうえで、「日本では昔から無償給付。貸与や有償にすると、大きな転換になり、慎重に判断するべきだ」と反論。
貸与制の問題点として、〈1〉ハードカバーにするなどの工夫が必要で、教科書価格が上昇する〈2〉自宅での予習復習が困難になる〈3〉保護者が個人用教科書を購入する傾向が強まる――などを挙げた。
同プロジェクトチーム(座長・中川政調会長)は、政府が6月にまとめる歳出・歳入一体改革に反映させる具体策を検討している。近く再び会合を開き、議論を詰める。
(2006年5月8日3時2分 読売新聞)(以上、引用)
小坂はこの「教科書貸与制度」を是非、実現して欲しいと思います。その理由としては、まず、教科書を公共物として大切に使う姿勢を身に着けるよいきっかけだと思うからです。教科書の検定は4年に1度ですから、4年間は教科書の内容は変わらないわけです。その間に痛んだものだけ交換すれば良いと思います。
今までの「教科書を1年間で使い捨て」している制度はなんともったいないことかといつも思っていました。文部科学省の「書き込みができず、学習に影響する」というコメントは、小坂の実感として理解できません。学習の基本の一つとして「きちんとノートをとり、要点をまとめる力を養うこと」ことが重要で、教科書にちょちょっと書き込みをするような学習方法を薦める意味が分かりませんが・・・。学生時代には歴史でも英語でもとにかく広告の裏にでも繰り返し書いて覚えたものでした。
どうしても、教科書に書き込みをしたい人は買うという選択肢も残しておけば良いのではないでしょうか。あと、貸与教科書の家庭への持ち込みはもちろん認めるべきです。
また、貸与制度の利点として、教科書会社、日教組、文部科学省の間の利権が縮小することも期待できます。
記事中にあるように、以下の通り外国でも貸与制度の国が多いのが実情です。
米国の例: 大半の州は、公立の初等中等学校の児童生徒会員に対して教科書を無償で提供すべきことを州法に定めている。無償制の場合、学校が備品として教科書を保管し、児童生徒にこれを貸与する形が通 常である。また、近年は、学力の向上を目指して宿題を出す学校が多くなり、児童生徒に教科書を家庭に持ち帰らせる場合が多くなっているようである。教科書を著しく破損した場合、親がこれを弁償をするようになっている。
英国の例:公営学校の教科書は、(義務教育以後についても)、地方教育当局の経費負担により、各学校が、生徒に無償で貸与している。私立私営の学校の場合は、教科書は有償である。
公営学校の場合、初等学校では、教科書は学校に備えつけられているが、中等学校では、生徒個人に貸与されA家庭への持ち帰りも認められている場合が多い。
ドイツの例:すべての州で、教科書無償の措置が講じられている。この場合、多くの州では無償貸与を実施し、一部の州(例えばベルリン)では無償給与を実施している。教科書無償の措置は、公立の義務教育学校だけではなく、公私立の初等中等学校のすべてに適用されている。
フランスの例:義務教育学校(小学校及びコレージュ)の教科書はすべての児童生徒に無償で貸与される。一冊の教科書の使用期間は4年が原則とされ、損傷の度合の高いものから毎年4分の1ずつ補充されるようになっている。
無償貸与の経費は、小学校については市町村が、またコレージュについては国がそれぞれ負担している。
後期中等学校(リセ)の教科書は有償である。
ノルウェーの例:義務教育学校の教科書は児童生徒に無償で貸与される。一方、上級中等学校の教科書は有償である。
フィンランドの例:初等中等学校の教科書は、教育無償の原則に従って、すべての児童生徒に無償で貸与されている。
引用はこれくらいで、他の国についても興味が有る方は、こちらのページの下のリンクからご覧下さい。
教科書を自分の所有物にして好きに使えた方が、使う方は気が楽ですし、新品なら嬉しいかもしれません。しかし、使う本人(や保護者)が喜べば良いというものではなく、「先輩から引き継いだ教科書(公共物)を大切に使い、後輩に引き継いで行く」という気持ちを養う教育こそが、今求められていると思います(参考記事:3月3日「机と椅子の贈り物」)。家庭に帰れば好き勝手に使えるモノがあふれている現在だからこそ、学校という教育の場でそうした姿勢が必要だと思います。


教科書を読んで黒板の字をノートに書き写す今までの授業を変えた方が良い。
生徒全員に一台3万台くらいのローエンドPCを貸し与えれば
ノートも鉛筆も消しゴムも要らなくなる。。
教科書はウィキペディアの教科書版をネットに作って、
誰でも書き込めるようにすれば教科書作者に払う費用も教科書を作る費用も要らなくなる。
義務教育の間は、パソコンなどの機器を使った教育よりも書籍や実体験を重視した教育を行うべきと思いますので、紙の教科書は必要だと考えています。
私は教科書が大好きで想い出の品であり、時折取り出しては読んでみたりするので、「貸与が基本」とするこの案は残念に思います。「教科書は1年で使い捨て」ではありません。国語は素晴らしい読み物がつまっているし、歴史も「ああ、自分はこういう教育を受けたんだっけ。この時はこういう風に考えたな。こどもだったな」と振り返る。音楽など今まさに引っ張りだしてピアノで弾いている所です。姉の教科書と見比べてみた事もありますし、美術、道徳、付随する地図帳等の資料集に至るまで、どれも後で見返さなかった教科はありません。
一番気になるのは算数・数学です。忘れた所を読み返したりしませんでしたか?外国の児童は忘れた部分をどのように補っているのでしょうか。半年〜1年前の教科書を頻繁に見返していた私は不思議に思います。私が忘れっぽいだけなのでしょうか?
同じものが4年使えると言いますが、4年たった教科書はまさか廃棄ですか?それこそ勿体ない!
ただ、計算ドリル漢字ドリルなどの問題集は貸与で十分だと思います。
ところで、このプロジェクトの座長は中川秀直先生なのですね。偶然にも中川先生の選挙区民です。そちらにも意見を述べておきたいと思います。小坂先生のブログで知る事が出来て良かったです。
私のような意見の持ち主はメジャーではないと承知していますが、「教科書1年で使い捨て」には反論したかったので長々とコメントさせていただきました。それでは失礼します。
コメント、ありがとうございます!
確かに、あなた様のように大切に使い続けることは素晴らしいと思います。しかし、そうした方には買い取りという方法も有りますので、所有されることは可能な形にすれば良いと思います。
お気持ち、理解できる面が多いのですが、「個人で所有しなくても教科書を公共物として大切にしながらきちんと学習する」ことは可能だと思いますし、そうした形の方が望ましいと思います。