2006年07月25日

「昭和天皇の発言メモは捏造」について

 昨日の記事を読んでいただいた前提で続きを書きます。まず、参考までにこれまでに明かにされているメモの全文を以下に示します。


富田・元宮内庁長官のメモ裏面              
             63.4.28 [■]
☆Pressの会見                            
[1]   昨年は
  (1) 高松薨去間もないときで
    心も重かった
  (2) メモで返答したのでつく
  していたと思う
  (3) 4.29に吐瀉したが その前で
    やはり体調が充分でなかった
  それで長官に今年はの記者
  印象があったのであろう
    =(2)については記者も申して
    おりました
 
[2]  戦争の感想を問われ
  嫌な気持を表現したが
  それは後で云いたい
  そして戦後国民が努力して
  平和の確立につとめてくれた
  ことを云いたかった
  "嫌だ"と云ったのは 奥野国土庁長
の靖国発言中国への言及にひっかけて
云った積りである


富田・元宮内庁長官のメモ表面        
               4.28 [4]
  前にあったね どうしたのだろう
  中曽根の靖国参拝もあったか
  藤尾(文相)の発言。
 =奧野は藤尾と違うと思うが
  バランス感覚のことと思う
  単純な復古ではないとも。

  私は 或る時に、A級が
  合祀され その上松岡、白取
  までもが、
   筑波は慎重に対処して
  くれたと聞いたが

                      
〇 松平の子の今の宮司がどう考
余そ  えたのか 易々と
り う    松平は平和に強い考が
閣で  あったと思うのに 親の心子知
僚す  らずと思っている
も が   だから 私あれ以来参拝
知か  していない。それが私の心だ
ら多
すい

     ・ 関連質問 関係者もおり批判になるの意
(以上がメモの内容です)

 昨日の記事ではリンク先を参考ページとして挙げたのは様々な解釈が可能であり、昭和天皇の発言と断定する根拠が皆無であることを示すためです。また、いくつかのパーツに分かれているこのメモは全体が一人の発言の内容を一度に書きとめたものなのか、複数の人間の発言を1つのメモに続けて書いたのか、どちらの解釈も可能です。なにしろ主語が無いのですから・・・。[1][2]は徳川前侍従長の発言、[4]は藤尾元文相の発言といった解釈も可能ですし、[4]の中の「前にあったね どうしたのだろう  中曽根の靖国参拝もあったか」という言葉は富田元長官の心の内を記したのかもしれません。最期の欄外の「・関連質問・・・」「そうですがか多い・・・」なども解釈が多様にできます。

 昭和天皇がお隠れになる昭和64年やその前年の63年の昭和天皇のご動静については、図書館にでも行けば多くの書籍がドキュメントや回想録として複数読めますので、4月を中心に私も確かめています。

 メモに63.4.28 [■] ☆Pressの会見とありますが、はっきりしているのは昭和63年4月28日には昭和天皇の記者会見は行なわれていません(他に誰かの記者会見が有ったかは不明です)。天皇誕生日を前にした4月25日には記者会見が行なわれていますが、その内容は当時の29日の新聞に詳しく記載されていますが、上記メモの一部に関連する記載があるのみで、大東亜戦争に関する責任者について個人名を挙げての発言は一切していません。また、徳川侍従長は4月12日に退任の記者会見を行なっていますが、当時の日経新聞、毎日新聞、朝日新聞の4月12日夕刊によると昭和天皇の強い希望で、侍従長退任後も4月下旬から侍従職参与として引き続き、皇居に通い昭和天皇の日常のご相談役、歌づくりへの対応をすることになったそうです。当時の日経新聞の記事によると、それまでは侍従長は宮中の側近が勤めてきたのですが、徳川氏退任後、キャリア官僚である山本氏が侍従長に就任しています。宮内庁は官僚機構・官邸側の「オモテ」と皇室の側近である「オク」の区別が明確であり、「オモテ」の人間が「オク」の責任者を始めて勤めるにあたってやはり当初は勝手がわからない面もある。そこで前の侍従長に侍従職参与として引き続き昭和天皇の傍に仕えるようにしながら、「オモテ」と「オク」を一体化させようとしたとの分析が成されています。そのように働きかけたのは警察機構において絶大な権力を誇り、富田長官の実質的なボスである後藤田正治氏であったということです。
 そうした環境において、徳川侍従職参与から折に触れて意見を聞いていたことは大いに考えられます。

 日経の記事が根拠を示さず、「昭和天皇の発言」とぶち上げたことが捏造であると書いたのは以下の例え話と同じことをしていると考えたからです。

例え話:藤○教授という考古学博士が亡くなり、遺品を調べていたらビニール袋に入った石器のような石が大量に出てきた。その袋には「荒川区にて発掘。50万年前の地層から出てきた。」と書いたメモが貼りつけて有る。それを受けて、すぐさま新聞で「荒川区にて50万年前の人類が使っていた石器が大量に発掘される」と一面で発表する。考古学の権威が「歴史的発見だ」とのコメントもしっかり記事に付けて。しかし、その石器の年代測定をしたのか、誰が鑑定したのか、そのメモは本人が本当に書いたのか、荒川区のどこから発掘したのか、偽物の可能性は無いのか、そうした点については何らの記述も無く、説明を求める声が上がっても無視。「歴史的発見」であるなら広く公表するのが当然であるのにそうしない。そんな記事を私は「捏造記事」と呼びます。

 何ら根拠の無いことをあたかも固定的事実として報道する今回の「富田メモ」の記事は捏造記事です。今後、日経新聞に説明を求め責任を問うていく必要が有ると考えています。

small_ribon.gif日経新聞の「富田メモ」についての記事は捏造記事、と考える方はこちらを押してください。
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posted by 小坂英二 at 00:00| Comment(4) | TrackBack(5) | 大東亜戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あなたのような議員がもっといれば良いのに・・・
Posted by s at 2006年07月27日 23:40
初めてコメントいたします。

まず、このメモについての検証を望みます。その意味では先生の分析、納得です。

そして、私の意見ですが、メモの真贋問わず、陛下がこうおっしゃられてるのだからこうしなければいけないなんていうのはファシズムです。それを、今まで天皇制などという言葉で陛下、ひいては日本国全体を貶めてきていたマスコミが大騒ぎしているなど笑止千万です。陛下の御心がどうであったか、我々が知ることはひとつにはいいことではありますが、それをもって何々すべしなど、それこそ陛下の御心の冒涜です。

私は真摯に先人の足跡に畏敬の念を抱き靖国神社に参拝することを選択します。そうでない方も、この富田メモを根拠に靖国問題を論ずることなきよう希求する次第です。

失礼しました。

これからも、更なるご活躍、遠く関西の地よりお祈り申し上げます。
Posted by ファイブ at 2006年07月28日 13:52
>ファイブさん
気になったので、一言。
陛下のお言葉だから従う、と言うのはファシズムではなく、日本帝国主義もしくは右翼国家主義ではないでしょうか。
上記も正確には違いますが、ファシズムと云う言葉は一種のレッテル張りなので、ご使用には注意されたほうが宜しいかと思います。
Posted by foo at 2006年07月30日 20:02
>> ファイブ 様

 おっしゃる通り、メモの一人歩きが著しい現状となっておりますが、そうしたことは慎むべきことですね。「何を書いたのかわからない」ただのメモに過ぎないのに・・・。激励を励みに今後も頑張ります。

>> foo 様
 
 「陛下のお考えがこうだから、政治的にもこうした動きをすべき」と早速、反日政治屋達が騒ぎ始めていますが、こうした連中の日頃の言動と照らし合わせると著しい矛盾をしていますね。
Posted by 小坂英二 at 2006年08月02日 22:57
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