「未公開株詐欺」についての概要や被害状況等は都のホームページの平成17年10月26日の記事に掲載されていますので、まずお読みいただければと思います。
相談を受けた被害の実例について、時系列にて。
平成17年秋
界XLAYER(エクスレイヤー)から勧誘電話がかかる。「未公開株を今のうちに買えば、必ず値上がりする」との言葉に興味を引かれ、営業員(氏名:和知 正孝)と会うことに。
会うと「日本ファースト証券」が上場するので、未公開株である間に買っておけば必ず儲かるとの話。しかし、後日、営業員が来て「日本ファースト証券株をの購入する権利は完売してしまった。申し訳無い。替わりに来年上場予定(小坂注:完全な嘘ですよ!)の大塚化学ホールディングスの株を買わないか?」と持ちかけられる。
※小坂注:インチキ営業マンがよく使う手口で「あなた様にご紹介するつもりだったAが残念ながら、手に入らなくなったので、お詫びにBを紹介します。こちらも良いですよ!」と誠意ある態度を演出して信用を得る訳です・・・。因みにAに当たる「日本ファースト証券」は沿革を見る限り現時点でも上場してません。
平成17年11月 営業員の話を信用し、未公開株を300株購入する旨の契約を行なう。金額は伏せますが極めて高額のお金を振り込みました。口座は下記の通りです。
東京三菱銀行 八重洲通支店 普通:1951720
郵便局 10150−65418921
名義:株式会社 EXLAYER
因みに社長の名前は「横田慎一」=後で出てきます。
後日、300株の株券が送られて来る。どう見ても本物なので安心していた。しかし、株券の裏面には購入者=相談者の名前は無く、元の所有者らしき名前のみが記載されており、株式の所有権が相談者に移転されていない様子。
平成18年に入ってしばらくして、マスコミで「未公開株詐欺」の話が取り上げられ、逮捕者も続出していた(報道記事の一部)。そこで不安になり、株式会社 EXLAYERの所在地(中央区日本橋茅場町1−5−2)を相談者が訪ねると、看板は残っているものの、もぬけの空。電話すると全く違う企業の電話番号となっていた。大塚化学ホールディングスに相談者が電話してみると、「上場予定など無い。そうしたありもしない話に騙された方から多くの連絡・問い合わせが来ている」との話。
都道府県や市区町村で行なっている消費者相談に相談者が連絡する。親身に話を聞いてくれるものの、最終的には「消費者相談だけでは対応しきれないので弁護士に相談するのも手ですよ・・・」と言われる。
弁護士に相談し、株式の所有権を自分に移すことなど、可能になれば・・・と相談者は考え、小坂に「こうした分野に強い弁護士を紹介して欲しい」と相談をなさいました。
小坂は弁護士を紹介する前に、可能な限り調べてみることにしました。以下、説明やリンクを参照下さい。
・大塚化学ホールディングスのホームページでは数度に渡って、この詐欺行為について注意を喚起する記事を掲載しています。
平成17年4月11日 平成17年7月15日
平成17年12月13日 平成18年3月2日
その中でも平成17年12月13日の記事の以下の記述は相談者の契約にとって決定的なものでした。
(以下、抜粋)
当社は平成17年11月25日(金)開催の第55期定時株主総会における決議およびその後の所定の手続きにより、平成17年12月13日(火)をもちまして株券廃止会社へ移行いたしました。
この度の株券廃止会社への移行は、株式のペーパーレス化の一環として改正された法律* に基づき実施するものであり、株券の紛失・盗難等のリスク回避および当社業務の合理化を図り、株主様のご便宜に資することを目的としております。
*株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律
(「株式等決済合理化法」 ( 2004年6月2日成立、同年10月1日施行)
・現在当社が発行している「株券」はすべて無効となりました。
・株券廃止会社とは、定款に「株券を発行しない」旨を定めることにより、株券を発行しない会社をいい、今後当社は一切の例外なく株券を発行いたしません。
・株主名簿に記載されている株主様の権利はこれまでと何ら変わりません。
(以上、抜粋終わり)
相談者の置かれた状況は株主名簿は以前の所有者のままで、かつ、株式の現物の裏書も前の所有者のまま。しかし、現物を持っていれば交渉の余地は有ると考えておられたようですが、「現在当社が発行している「株券」はすべて無効となりました。」との記載の通り、もはや株券は紙くずに過ぎません。これでは、弁護士を立てても弁護士費用が無駄になるだけで、株式が自分のものになる可能性は無いと言わざるを得ません。さらに未公開株の第三者への譲渡は認められないというハードルもありますが・・・。
これは株式のペーパーレス化を実行したということです。テレビCMなどでも「平成21年には完全にペーパーレス化するので、手持ちの株券を証券会社へ持ちこみましょう」といった宣伝がなされていますが、こうした猶予があるのは株式公開会社についてです。株式未公開の会社は現時点でも株主総会等を経て、一定の告知期間を経て、株券廃止会社になることができるのです。しかし、このような違いは、一部の金融関係者を除いて知られていないですよね・・・。それをいいことに「紙くず」となる株券を被害者に渡すことで安心させる・・・。昨年11月の株主総会で株式廃止会社となることを決め、12月に完全に移行した、その時と同じくして、被害者高額のお金を振り込ませ、信用させるために「単なる紙切れである株券」を渡す・・・。極めて悪質で巧妙な詐欺で許しがたい手口です。
・契約書に書かれた界XLAYERの社長の横田慎一の名前が平成18年5月10日の報道記事に。以下、抜粋。
「HIC」元社長逮捕
千葉県警捜査4課は、「大塚製薬」などが上場するとだまし、未公開株を 100万円で販売したとして、株式投資顧問会社「鰍gIC」(本店 中央区日本橋茅場町1−4−2 代表 横田慎一氏)元社長の山田晴久、同「鰍rMC投資クラブ」(本店 中央区日本橋兜町16−5 代表 杉山充氏)役員の渡辺清喜ら4容疑者を詐欺容疑で逮捕した。
山田容疑者らは、このほか20数社の未公開株約20万株を計約15億円で売っており、同課は同様に販売代金を詐取した疑いが強いとみて追求する。
「HIC」社は平成16年8月設立、資本金 3,000万円。「SMC投資クラブ」社は平成1年11月設立、資本金 1,000万円。
(以上、抜粋)
様々な企業名を使い分けて、同じ人物が未公開株詐欺を働いていることが分かります。こうした未公開株詐欺を行なう会社はある情報では数百社存在しているとか。芥ICと界XLAYERは住所を見るとすぐ隣のブロックでこの辺りはそうした輩の拠点になっているのか?
・大塚化学ホールディングスに連絡して数点の確認と「紙切れとなった株券」のその後の処理について聞きました。
「株券廃止会社となっても、株券を株主から回収する義務は当社には無い。しかし、事前に株主に対して任意で「株券は無効になるので、当社に返送して下さい」と協力を求めた。しかし、全員の協力は得られず、返送されなかった株券が存在する。」とのこと。無効になった株券がこうした犯罪に利用されていることを考えると、業界の制度として、こうしたケースにおいては必ず株券を発行元へ返すことを義務付けるべきだと思います。
他にも様々な関連情報を集めた上で、小坂としては以下の話を相談者にさせていただきました。
・弁護士を紹介したとしても、詐欺会社は雲隠れし、株券が完全に無意味なものとなっている今、株主としての所有権を確保することは不可能であり、被害額に加えてさらに弁護士費用が相談者の負担になるので、弁護士に相談しない方が良い。
・警察にはこれから被害届けと細かい状況説明をして、捜査、そして犯人の検挙への一助に、また犯罪事例としてのデータとなるように協力をお願いしたい。
・こうした悪質な未公開株詐欺について、多くの方に知っていただくために、個人情報を除き、事例としてブログで紹介させて欲しい。
相談者の方は落胆しながらも、以上の点について理解・了承してくださいました。小坂としては、少しでもお金や権利を取り戻せるように力になりたかったのですが、そうした面で役に立てず、心苦しい思いでした。
こうした「未公開株詐欺」はネットを利用しない層が騙されやすいようです。被害を受けた相談者の方も「インターネットを使って企業情報などを調べて情報を集めていればこんな詐欺に騙されなかった・・・」とおっしゃっていました。確かに、今回の大塚化学ホールディングスの株についても「新着情報」を見ていれば昨年の4月から注意を喚起する文章が掲載されているのですから・・・。読者の方へのお願いとして、以上の詐欺事例についてご理解いただいた上で、ご家族やお知り合いの「ネットを使わない方々」に是非、「こんな事件があるんですよ。注意しましょう。」と話をしていただきたいのです。詐欺事件の被害者を減らすために・・・。
最後に参考リンクをいくつか。
金融庁の該当HP
日本証券業協会の該当HP
東京証券取引所HP
未公開株詐欺、許すまじ!、という方はこちらを押してください。
興味深く読ませていただきました!これからも情報を交換していきましょう!